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歌川派の系譜 ― 豊春から国貞・国芳・広重へ

歌川派は、歌川豊春(1735–1814)を祖とする浮世絵師の流派です。門人の初代歌川豊国と歌川豊広が派の基礎を固め、その門下から歌川国貞、歌川国芳、歌川広重が出ました。役者絵、美人画、武者絵、名所絵のいずれの分野でも歌川派の絵師が第一線に立ち、幕末の浮世絵界は歌川派の絵師によって占められていたともいわれます。本稿では、当店の図案にも用いている国貞・国芳・広重を中心に、歌川派の系譜をたどります。

祖・歌川豊春

歌川豊春は豊後の出身とも伝えられますが、確かなことはわかっていません。京都で狩野派の鶴沢探鯨に、江戸で鳥山石燕に学んだとされ、江戸・芝の宇田川町に住んだことから「歌川」を画姓としたといわれます。

豊春が得意としたのは、西洋の透視図法を取り入れて奥行きを強調した「浮絵」です。江戸の名所などを描いた豊春の浮絵は、のちに浮世絵の風景画が発展する素地となりました。肉筆の美人画にもすぐれた作品を残しています。

豊国と豊広

豊春の門人のうち、初代歌川豊国(1769–1825)と歌川豊広(1773–1829)は並び称される存在でした。豊国は、寛政6年(1794)から刊行された役者絵の揃物「役者舞台之姿絵」で人気を得て、役者絵と美人画、草双紙の挿絵で活躍しました。門人は四十名を超えたといわれ、歌川派が大きな流派となる礎を築いています。

一方の豊広は、美人画のほか、読本や草双紙の挿絵、肉筆画を多く手がけました。豊国ほど活発な活動ではありませんでしたが、その門から風景画の広重が出ています。

歌川派では、門人が師の画号から一字を受けて自らの号とすることが多く、豊国の門人である国貞と国芳は「国」の字を、豊広の門人である広重は「広」の字を受け継いでいます。広重の号は、師の「広」と、自身の名の「重」を合わせたものとされます。

国貞と国芳 ― 豊国の門下

歌川国貞(1786–1864)は、十五、六歳で初代豊国に入門し、役者絵と美人画で早くから人気を集めました。天保15年(1844)には師の名を継いで豊国を名乗り、今日では三代豊国と数えられます。生涯に手がけた作品の数は、浮世絵師のなかで最も多いといわれます。

同じく豊国の門人であった歌川国芳(1797–1861)は、入門後しばらく目立った仕事に恵まれませんでしたが、文政10年(1827)ごろから刊行された「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」で評判を呼び、武者絵の第一人者となりました。猫や金魚に人のしぐさをさせた戯画も、国芳の得意とするところです。

広重 ― 豊広の門下

歌川広重(1797–1858)は、十五歳ごろ豊広に入門し、翌年に「広重」の号を許されました。天保4年(1833)に刊行が始まった「東海道五拾三次之内」で風景画の名手として知られるようになり、以後、「六十余州名所図会」や「名所江戸百景」など、諸国や江戸の名所を描いた揃物を数多く手がけました。

国貞と広重は、嘉永7年(1854)から丸屋久四郎が刊行した「雙筆五十三次」で合作しています。画面の上部に広重が宿場の風景を、手前に豊国(国貞)が宿場ゆかりの芝居や物語の人物を描き、人物画と風景画それぞれの第一人者が一図を分担しました。

歌川広重・歌川国貞(三代豊国)《雙筆五十三次 吉田》
歌川広重・歌川国貞(三代豊国)《雙筆五十三次 吉田》

「豊国にかほ、国芳むしや、広重めいしよ」

嘉永6年(1853)に刊行された評判記『江戸寿那古細撰記』は、当時の浮世絵師を「豊国にかほ(似顔)、国芳むしや(武者)、広重めいしよ(名所)」と評しています。役者の似顔絵は豊国(国貞)、武者絵は国芳、名所絵は広重というように、この時代の主要な画題のそれぞれで、歌川派の絵師が第一人者と目されていたことがわかります。三人がそろって筆をとった東海道の揃物「東海道五十三對」も刊行されました。

歌川国貞(三代豊国)《東海道五十三次之内 浜松 毛剃九右衛門》歌川国芳《義経十九臣》(大判三枚続のうち)
歌川国貞(三代豊国)《東海道五十三次之内 浜松 毛剃九右衛門》/歌川国芳《義経十九臣》(大判三枚続のうち)

幕末から明治へ

国芳の画塾からは、多くの門人が育ちました。月岡芳年(1839–1892)は嘉永3年(1850)、十二歳で国芳に入門し、明治に入ってからも「月百姿」や「風俗三十二相」などの揃物を手がけ、新聞の挿絵でも活躍しています。のちに独自の画風を築く河鍋暁斎も、天保8年(1837)、数えで七歳のときに国芳の画塾に入っています。

国貞に学んだ豊原国周(1835–1900)は、明治の役者絵で活躍し、大判三枚続の大画面に一人の役者の半身像を描く新しい形式も試みました。さらに、芳年の門人の水野年方からは鏑木清方が、清方の門下からは伊東深水が出ており、歌川派の流れは近代の美人画にも受け継がれています。

当店の商品

当店では、歌川派の絵師のうち、歌川国芳、歌川国貞、歌川広重の作品を図案にしたTシャツやトートバッグ、ポーチ、マグカップを販売しています。それぞれの生涯と代表作は歌川国芳と戯画、歌川国貞(三代豊国)と役者絵、歌川広重と名所絵で、浮世絵の歴史の全体像は浮世絵とは何かで紹介しています。

掲載した図版3点は、運営会社が所蔵する作品を撮影したものです。

参考資料

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